30 Years of the Policy and Human Resource Development Grant - 1994–2024

アフリカ開発銀行グループ 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み 1994–2024 アフリカ開発銀行グループと日本

開発政策・人材育成基金(PHRDG ) 30年の歩み 1994–2024 ISBN 978-1-9160325-7-6 原題: 30 YEARS OF THE POLICY AND HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT GRANT 1994–2024 Text © African Development Bank Group. All rights reserved. Published in 2024 by Human Development Forum, a division of Tudor Rose www.humandevelopmentforum.org www.tudor-rose.co.uk 免責事項 本冊子で採用されている名称および資料の表示は、国、領土、都市、地域、もしくはその当局の法的ま たは開発的地位、または国境、境界に関するTudor Rose社の見解を示すものではありません。特定の 企業もしくは製造業者の製品に関する記述は、それらの特許取得の有無にかかわらず、言及されてい ない類似物に対するTudor Rose 社の承認や推奨を意味するものではありません。 本冊子で表明された意見は著者に属し、出版社の見解や方針を反映しているわけではありません。

アフリカ開発銀行グループと日本

謝辞. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 アフリカ開発銀行グループからのメッセージ. . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 日本政府からのメッセージ. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 序文. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8 日本の開発協力優先課題. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 アフリカ開発銀行グループの5つの最優先分野(High5)............... 9 アフリカ開発銀行グループ. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11 アフリカ開発銀行グループのポートフォリオ. . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11 アフリカ開発銀行グループ加盟国....................... 12 アフリカ開発銀行グループと日本の協力関係年表. . . . . . . . . . . . . . . . 16 開発政策・人材育成基金の活動. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19 数値で見る開発政策・人材育成基金. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23 直近のプロジェクト 27 アフリカの若者の高等教育・訓練へのアクセス支援. . . . . . . . . . . . . . 28 根拠に基いた環境再生型農業によるアフリカにおける気候変動への取り組み..... 32 アフリカの持続可能な債務管理への関与の強化............... 34 ビジネスフォーラムを通じた日本とアフリカの貿易と投資の促進. . . . . . . . . 36 過去30年に開発政策・人材育成基金によって支援された30のプロジェクト例. . . . . 39 目次 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み 1 2024

謝辞 本冊子は、日本政府の拠出を受け、アフリカ開発銀行が信託基金として 運営する開発政策・人材育成基金(PHRDG)の30周年を記念して出版さ れるものです。 数字で見る信託基金の概要と直近のプロジェクト事例を通して、本冊子 では全関係者が協力して届けてきた、市民生活向上に関する具体的な 成果を紹介します。 本稿執筆時点で進行中のプロジェクトはアフリカ開発銀行グループの 次のセクター部門によって実施されています:農業、ガバナンスと経済 改革、人材・若者と職業能力開発、水と衛生。 日本国財務省並びにアフリカ開発銀行グループの総裁室、日本理事室、 アジア代表事務所、広報局、資金動員・パートナーシップ局の関係者に 心より感謝の意を表したいと思います。皆様のご尽力とご教示により本 冊子の刊行が可能となりました。 アフリカ開発銀行グループと日本 2 1994

3 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

アフリカ開発銀行グループは、日本との協力関係を非常に誇 りに思っております。日本による当行グループを通じたアフリ カ大陸への揺るぎない貢献は、アフリカ開発基金への出資 及び譲許的借款の供与、そして民間セクター開発のプロジェ クトへの協調融資、そして二つの信託基金への拠出に及びま す。これらの信託基金の一つ、開発政策・人材育成基金が設 立30周年を迎えることは、数十年に渡る日本によるアフリカ の人々への支援に敬意を表する良い機会です。 1994年から現在に至るまで、当信託基金は農業・教育・ガバ ナンス・保健・地域統合などを含む幅広いセクターを対象と してきました。これまでに100以上のプロジェクトが信託基金 の助成を受けており、2023年末には実施中12案件のポート フォリオ総額が11億円を超えました。当信託基金は小規模な がらも強力に、当行グループの5つの最優先分野(High 5)を 人材育成の観点から補強しています。本冊子は当信託基金 が支援してきたプロジェクトのごく一部に光を当てたに過ぎ ません。 最後に、日本国財務省が、当行グループとの協力関係を拡大 し、アフリカ変革における人材育成の効果と革新をもたらす ために、協力してきて下さったことに賛辞を送ります。 アフリカ開発銀行総裁からの メッセージ アフリカ開発銀行グループ総裁兼理事会議長 Akinwumi A. Adesina (アキンウミ・A・アデシナ) 2023年末時点で、 開発政策・人材育 成基金のポートフ ォリオは総額 11 億円 に及ぶ12の 実施中案件を有 しています。 アフリカ開発銀行グループと日本 4 1994

日本政府を代表して、本冊子の出版により、開発政策・人材育成基 金の30周年をアフリカ開発銀行グループとともに祝福できること を嬉しく思います。 日本はコミュニティ全体、とりわけ、貧しく脆弱な人により深刻な影 響及ぼす地球規模及び地域の課題解決のための努力を先導して います。これらの問題解決には持続可能で強靭な社会の構築に向 け一丸となって努力することが必要不可欠です。したがって、アフ リカの社会・経済の発展の担い手となる人材を育成するために、 日本の人材育成のノウハウ、技術及び経験を活かした技術協力を 提供しています。 そのミッションを促進させるため、日本は財務省を通じ、1994年か ら2023年にかけて、46億円を開発政策・人材育成基金に拠出して います。設立以来、信託基金はアフリカの人材育成促進に尽力し、 アフリカの人々が知識と職業能力を高め、経済成長を加速させる 支援を行ってきました。 アフリカの明るい未来に向かい、アフリカの人々の志と若い世 代のダイナミズムに基づき、日本とアフリカの協力関係は発展し 続けます。日本はアフリカ支援において信頼するパートナーであ るアフリカ開発銀行グループと、今後も協力関係を強化していき ます。 日本政府からのメッセージ 日本国財務省 副財務官 藤井大輔 1994年から2023 年にかけて、日本 は開発政策・人 材育成基金に約 46億円を拠出し てきました。 5 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

日本は、アフリカの社会・経済の発展に おける変革の担い手となる人材を育成 するために、経験と専門知識を共有し ています アフリカ開発銀行グループと日本 6 1994

7 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

日本国財務省とアフリカ開発銀行グループは、30年前に開発政策・人材育成基金を 設立しました。本基金は当行グループが運営する最も古い二国間信託基金であり、人 材育成における日本とアフリカ開発銀行グループが共有する優先課題の解決を推進 するものです。1994年の設立以来、本信託基金がアフリカの発展について目に見える 違いをもたらし、また、これからも、もたらしていくであろうことを報告できることはと ても喜ばしいことです。本基金設立三十周年の節目に立ち会えることを大変光栄に思 います。 私が2021年7月に着任して以降、本信託基金への日本からの年間拠出額は2021年に 1億7600万円、2022年に3億4900万円、そして2023年に6億8500万円と、二倍、三倍 に増加し、より多くの優先分野のプロジェクトの支援が可能になったことを誇りに思 います。 アフリカでは、人口のおよそ40パーセントが15歳以下であり、概ね70パーセントが30 歳以下です。そのため近年、日本は高等教育と職業能力開発に注力してきました。ま た、最近では、信託基金の資金を農業、食料安全保障、気候変動、債務管理および保 健分野におけるプロジェクトに充てることを選択しました。こういったセクターの選択 は、世界の統計に基づいています。アフリカは、世界の未耕作地の65%を擁し、気候変 動に対して世界で最も脆弱な10か国中の7か国がアフリカにあり、さらに多くのアフリ カの国々が既に債務危機、あるいは債務危機に陥る局面にあります。これらのセクタ ーにおいて課題は山積みであり、本信託基金が変革を促すことができると信じており ます。 その規模にふさわしいように、開発政策・人材育成基金は比較的簡易な管理構造を もっており、これにより我々はプロジェクトの優先順位づけ、要請、審査、プロジェクト の承認において機敏に対応し、財政資源を現場で有効に活用することが出来ます。本 基金は、政策立案、プロジェクト準備、能力開発に注力することにより、重要セクターに おける融資可能なパイプライン案件を開発する当行の能力を補完しています。私は 本信託基金が、当行と日本の連携を強化していると実感しています。 我々は、将来を見据えながら、今までの多くの成功例に則って、目前の課題に取り組ん でいます。2030年までに、さらにそれ以降も、アフリカ大陸における持続可能な開発 目標(SDGs)の達成に向けて、開発政策・人材育成基金の関連性と貢献を引き続き 確保していきます。 2023年日本は、前 年のほぼ2倍にあ たる6億8500万円 を拠出しました 序文 アフリカ開発銀行 日本代表理事 野元隆章 8 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

日本の開発協力優先課題 質の高い成長とそれを通じた貧困撲滅 普遍的価値の共有と平和で安全な 社会の実現 地球規模課題への取組を通じた持続可能で 強靱な国際社会の構築 アフリカ開発銀行グループの 5つの最優先分野(High 5) アフリカの食糧増産 アフリカの電化 アフリカの工業化 アフリカの地域統合 アフリカの人々の生活の質の向上 9 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

アフリカ開発銀行グループと日本 10 1994

1964年に設立されたアフリカ開発銀行グループは、 アフリカ開発銀行、アフリカ開発基金、ナイジェリア 信託基金からなり、アフリカの持続的成長と貧困削 減を目的とする多国間開発金融機関です。 アフリカ開発銀行グループ 加盟国政府向け支援 民間セクター向け支援 78.9% 21.1% 78.9% アフリカ開発銀行グループのポートフォリオ 2023年12月31日時点 プロジェクト数 1,186 承諾総額 414億UA 地域ごとの実績 セクターごとの実績 支援種別ごとの実績 ナイジェリア 7% 中部アフリカ 10% 交通 28% 電力 20% 金融 14% 農業 13% 水供給と衛生 9% セクター横断 6% 社会 4% その他 4% 鉱業・採石業 2% 北アフリカ 13% 南部アフリカ 20% 西アフリカ 23% 東アフリカ 27% 11 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

アフリカ開発銀行グループ加盟国 54の域内加盟国 アルジェリア 1964年9月 カーボベルデ 1976年4月 ジブチ 1978年5月 ガーナ 1964年9月 マダガスカル 1976年5月 ナミビア 1991年5月 トーゴ 1964年9月 シエラレオネ 1964年9月 アンゴラ 1980年6月 中央アフリカ共和国 1970年8月 エジプト 1964年9月 ギニアビサウ 1975年5月 マラウィ 1966年7月 ニジェール 1964年9月 チュニジア 1964年10月 ソマリア 1964年10月 ベナン 1964年9月 チャド 1968年8月 赤道ギニア 1975年6月 ギニア 1964年9月 マリ 1964年9月 ナイジェリア 1964年9月 ウガンダ 1964年9月 南アフリカ 1995年12月 ボツワナ 1972年3月 コモロ 1976年5月 エリトリア 1994年5月 ケニア 1964年9月 モーリタニア 1964年9月 ルワンダ 1965年1月 ザンビア 1966年9月 南スーダン 2015年4月 ブルキナファソ 1964年9月 コンゴ (民主共和国) 1964年9月 エチオピア 1964年9月 レソト 1973年7月 モーリシャス 1974年1月 サントメ・プリンシペ 1977年4月 ジンバブエ 1980年6月 スーダン 1964年9月 ブルンジ 1968年10月 コンゴ 1964年9月 ガボン 1972年9月 リベリア 1964年9月 モロッコ 1964年9月 セネガル 1964年9月 エスワティニ 1971年7月 カメルーン 1964年9月 コートジボワール 1964年9月 ガンビア 1973年7月 リビア 1972年7月 モザンビーク 1976年6月 セイシェル 1977年4月 タンザニア 1964年9月 12 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

東京 連絡事務所 加盟国事務所 加盟国事務所 地域ハブ 本部 アジア代表事務所 アビジャン 27の域外加盟国 アルゼンチン 1985年6月 フィンランド 1982年12月 ルクセンブルク 2014年5月 スウェーデン 1982年12月 オーストリア 1983年3月 フランス 1982年12月 オランダ 1983年1月 スイス 1982年12月 ベルギー 1983年3月 ドイツ 1983年3月 ノルウェー 1982年12月 トルコ 2013年10月 ブラジル 1983年3月 インド 1983年12月 ポルトガル 1982年12月 イギリス 1983年4月 カナダ 1982年12月 イタリア 1982年12月 アイルランド 2020年4月 サウジアラビア 1983年12月 アメリカ合衆国 1983年3月 中国 1985年5月 日本 1983年2月 韓国 1982年12月 デンマーク 1982年12月 クウェート 1982年12月 スペイン 1984年3月 13 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

開発政策・人材育成基金は、加速した 経済成長達成のために必要なアフリカ の人々の能力強化を目指します アフリカ開発銀行グループと日本 14 1994

15 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

16 1994 1970 1980 1990 1975 1985 1995 アフリカ開発銀行グループと日本の 協力関係年表 1983年 日本がアフリカ開発銀行 に加盟。 1973年 日本がアフリカ開発基金 に加盟。 1994年 日本(財務省)とアフ リカ開発銀行グルー プが開発政策・人材 育成基金を設立。 2004年 国際協力銀行とアフリカ 開発銀行グループが 協力覚書に署名。 2018年 日本はアフリカ開発基 金の第14次増資のため 最大のブリッジローンを 供与。 2021年 アフリカ開発基金の第15 次増資のため、過去最大 の譲許的借款供与。 2016年 日本貿易振興機構とアフ リカ開発銀行グループが 協力覚書に署名。 2015年 日本政府が政府開発援助 (ODA)大綱を発表。 アフリカ開発銀行グル ープは5つの最優先分野 (High 5)を策定。 アフリカ開発銀行グループと日本

17 2024 2000 2010 2020 2005 2024 2015 2005年 国際協力機構を通じ 、日本政府とアフ リカ開発銀行グループはアフリカの民 間セクター開発のための共同イニシア ティブ(EPSA)を設立。同時にアフリカ 民間セクター向け支援基金(FAPA)が 財務省の支援により創設。 2013年 アフリカ開発銀行グループは 2013-2023の10か年戦略を策定。 2023年 日本がODA大綱を見直し、開発協力 大綱を策定。 2024年 開発政策・人材育成基金 設立30周年。 2024年 アフリカ開発銀行グループは20242033年の新たな10か年戦略を策定。 2012年 アフリカ開発銀行グループが東京に、 アフリカ域外初の事務所、アジア代表 事務所を開設。 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

アフリカ開発銀行グループと日本 18 1994

19 2024 1994年以来、当信託基金は多様な分野 に基金を提供してきました: アフリカ開発銀行グループの支援を 受けるプロジェクト・プログラムの 形成に向けた技術支援 域内加盟国の人材育成支援事業 域内加盟国の開発政策の策定及び 実施支援 開発政策・人材育成基金の優先事業 30 YEARS OF THE POLICY AND HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT GRANT

開発政策・人材育成基金はアフリカ開 発銀行グループにおける社会経済プロ ジェクトの重要な財源を形成しています アフリカ開発銀行グループと日本 20 1994

21 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

22 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

セクターごとのプロジェクト数 数値で見る開発政策・人材育成基金 2023年12月31日時点 完了済プロジェクト 93 実施中のプロジェクト 12 43億円 1994年からの累計承認額 204,510,376円 地域統合分野の承認額 827,248,151円 経済ガバナンス分野の承認額 1,994,621,431円 教育及び職業能力分野への 承認額 378,369,816円 農業分野の承認額 教育及び 職業能力開発 30 金融セクター開発 5 ジェンダー 1 保健 5 産業と貿易 2 栄養 1 その他 7 民間セクター開発 5 地域統合 12 社会的保護 2 水供給と衛生 2 農業 6 開発のためのコミュニ ケーション(C4D) 1 経済ガバナンス 26 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み 23 2024

開発政策・人材育成基金が支援するプロジェ クトは、日本とアフリカ開発銀行グループが 共有する人材育成の目標達成に貢献します 24 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

25 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

開発政策・人材育成基金 を通じ、日本は包括的か つ持続可能な未来に向け た職業能力や知識を身に つけられるよう、アフリカ の人々に投資をしてきま した アフリカ開発銀行グループと日本 26 1994

直近のプロジェクト アフリカの若者の 高等教育・訓練へのアクセス支援......................................28 根拠に基いた環境再生型農業による アフリカにおける気候変動への取り組み.................32 アフリカの持続可能な 債務管理への関与の強化. .........................................................34 ビジネスフォーラムを通じた 日本とアフリカの貿易と投資の促進...............................36 27 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

アフリカの若者の 高等教育・訓練へのアクセス支援 日本アフリカドリーム奨学金(JADS)プログラム ガーナ出身のマリー・イエボア・アサンテワさん(写真)は、2023年に 九州大学で衛生・公衆衛生学分野で修士号を取得。同年、アクラで SORA Technology社にビジネス・スペシャリストとして入社。感染症 の発見とコントロールについてどの様にドローンを活用できるかと 言う観点からのリサーチ、補助金申請書の作成、アフリカ全体のステ ークホルダーに対する窓口、ビジネス関連会議への参加、メディア関 連業務等を担当。 28 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

ナレッジ・ブローカーとして、日本と当行グループはアフリカの 青少年が競争力を身につける支援を行います。特にアフリカ 大陸の変革にとって重要な科学・工学・技術分野に注力します。 技術・職業教育訓練に加え、高等教育がこうした努力の重要な 構成要素になります。 日本アフリカドリーム奨学金(JADS)プログラム は、アフリカ大陸の人材育成を目標とした日本と当 行グループによる能力開発活動です。 当プログラムは、農業、経済開発、エネルギー、環 境、公衆衛生といった分野において成績の良いア フリカの学生に、日本またはアフリカの特定の大 学での修士号の取得に向けて、2年間の奨学金が 与えられ、卒業後は半年間の研究プロジェクトやイ ンターンへの補助金もあります。 当行グループの域内加盟国出身で、関連する学歴 及び職務経験があり、かつ出身国の開発に関して 実績のある人物が応募可能です。学位取得後は母 国へ戻り、新しく身につけた専門性を生かして国 家・地域の社会経済開発に貢献することが期待さ れています。 2023年末時点で、当プログラムは計23名の学生に 奨学金を供与し、既に18名が卒業しました。奨学生 の出身はサブサハラ・アフリカの10か国にわたり、 その三分の二が女性です。 奨学生は次の5つの日本の高等教育機関から入学 許可を得ています。立命館アジア太平洋大学、京都 大学、九州大学、上智大学、そして東京大学です。 日本企業15社がプログラムの卒業生にインターン シップを提供しています。 日本アフリカドリーム奨学金(JADS)プログラム 承認総額: 581,543,327円 承認年 :2017年 29 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

日本アフリカドリーム奨学金(JADS)プログラム ケニア出身のアンジェラ・キテカさん(写真)は、東京大学より国際協 力学専攻で修士号を取得、さらに2023年に東京大学と国連大学サス テナビリティ高等研究所よりサステナビリティ学の大学院ジョイント・ ディプロマを取得しました。 その後、ケニア国営機関である水資源庁に勤務し、地域の水資源利 用者組合と協力して統合水資源管理活動に従事しています。 30 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

日本アフリカドリーム奨学金(JADS)プログラム マラウィ出身のグローリー・シバレさん(写真)は、2023年に立命館ア ジア太平洋大学(APU)にて開発経済学修士号を取得。東京のリサ イクル企業、太陽油化株式会社にて勤めました。修士過程修了後、APU在 学中にインターンを務めた。潜在的な顧客の特定、ビジネスミーティング 調整、農業プロジェクト営業、プロジェクト管理業務等に従事しました。 31 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

根拠に基いた環境再生型農業 によるアフリカにおける 気候変動への取り組み 32 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

環境再生型農業は、変化する環境条件の下で、持続可能な 農業集約化、食料・栄養の安全保障、農場の収益性向上に つながる対策を通して、アフリカの気候変動への適応と レジリエンスを推進します。 ベナン、エチオピア、ナイジェリアにおける環境再 生型農業の促進をめざすプロジェクト。実施パート ナーはササカワ・アフリカ財団とソフトバンク・グル ープ。 プロジェクトの主となっている技術は、ソフトバン クの人工知能「e-kakashi」ソリューションです。これ は環境、天候、植物の成長、耕作やその他のデータ を収集し、その分析を補助することにより、科学的 農業経営を可能にするものてす。 E-kakashiは、温室効果ガスの排出削減と土壌炭素 隔離によって穀物生産の環境への影響を軽減し、 穀物生産性の向上とインプット(水、肥料、労働力) の有効活用を可能にする農業技術のパイロットを 実施し、アフリカの状況に適応させ、規模を拡大さ せるために活用されています。 エチオピアとナイジェリアでの 環境再生型農業の開発と促進 承認総額: 135,145,000円 承認年:2022年 本プロジェクトは、多様化した農業システムにおい てe-kakashiを用いた有用な環境再生型農業手法 を開発し小規模農家にその農法を推進するため のインセンティブ・メカニズムを構築する試みで す。改良された品種も官民パートナーシップを通し て提供される予定です。 期待される成果は、高収量品種及び環境再生型農 業の導入によって、両国で累計20万世帯の小規模 農家において優先品目の生産性が40~60%向上 し、生計が30%改善されることです。 ベナンにおける環境再生型農業 による米の生産性改善 承認総額: 119,385,727円 承認年 :2023年 エチオピアとナイジェリアでの新たな教訓に基づ き、本プロジェクトは、e-kakashiの活用による環境 再生型農業の推進を目指しています。これには水 田の脱炭素化や生物学的栄養強化により栄養価 が高められた改善品種の採用が含まれます。 同様に、ベナン国内の12,000人の農業従事者が新 品種採用と環境再生型農業の導入にすることで、 灌漑水田の生産性が40~60%向上し、生計の30 %が改善することが期待されています。 33 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

アフリカの持続可能な 債務管理への関与の強化 34 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

アフリカ諸国の膨張する公的債務は、2020年のCOVID-19 発生以前から重要課題でした。しかし、パンデミックにより アフリカ各国の財政余力はさらに圧迫され、不安定だった 債務状態は警戒レベルまで落ち込みました。 パンデミックとウクライナ情勢による食料や燃料 価格の高騰に対処するため、アフリカ諸国は保健 システムの強化、脆弱な市民の救済、そして苦境に 立つビジネス活動の強化のため追加の財源が必 要になりました。同時に、各国政府は、歳入の減少 や増大する債務履行義務、債務再編の可能性に直 面していました。そのような状況から、透明性が高 く持続可能な方法によって公的債務を管理する政 府の能力を強化する必要性に迫られていました。 そのため、本プロジェクトでは、公開ウェビナー等 により知識を広め、中部アフリカ地域における国 内資源動員にかかる研究を主導し、一部の域内加 盟国に対して債務環境スワップについての研修の 実施を目指しています。 当行の活動の結果、アフリカ各国政府の債務管理 と持続可能性に対する理解度が高まり、アフリカ 各国政府では公的債務管理を改善することができ ています。 持続可能な債務管理の ハイレベル政策対話 承認総額: 88,809,705円 承認年:2022年 プロジェクトの一環として、当行グループは2022 年8月にチュニスで開催された第8回アフリカ開発 会議(TICAD 8)のサイドイベントとして、債務管理 についてのセミナーを開催しました。各国要人が 参加する機会だったことから、イベントには多くの ハイレベルの参加者が参集し、高い関心を集めま した。 議論の焦点は当時の公的債務状況、特にG20の 「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を越えた債 務措置に係る共通枠組み」の現状と見通しにあて られました。300名の参加者の中にはチャド、エチ オピア、セネガル、ザンビアの政府高官、IMF、パリ クラブ事務局、民間金融関係者、国際金融機関、日 本を含む二国間パートナー等の代表者が含まれて いました。 参加者は、債務情報の透明性の向上、G20共同枠 組の拡大、アフリカと国際社会のためのより良い 債務管理メカニズム、アフリカ各国政府の債務管 理能力向上の必要性につき一致しました。 35 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

ビジネスフォーラムを通じた 日本とアフリカの 貿易と投資の促進 36 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

2000年代から始まったアフリカのダイナミックな経済成長を目 の当たりにし、日本はアフリカに対する民間投資を推進。日本の 民間企業がベンチャーに参入し、アフリカ諸国との関係を強化 するよう、ODAを補完する多様な施策を実施しました。 日本が新たなビジネス機会を創出する一つの方 策としてとったものに、日本-アフリカビジネスフォ ーラムの定期開催があげられます。国際貿易及び 投資は成長を促進するとともに雇用を創出するこ とで貧困の削減につながる重要な役割を果たし ます。 日本とアフリカ間の貿易・投資促進のプラットフォ ーム開発という目標のもと、フォーラムは平均して 5日間にわたり開催され、ネットワーキング、ビジネ スマッチング、市場についての情報収集と理解を 深める機会となっています。 初の日本-アフリカビジネスフォーラムは2014年に 開催され、第2回は2017年、ともに開催地は東京で す。パンデミックにより、2021年の第3回フォーラム はバーチャル開催となりました。参加者は右肩上 がりに増加し、第1回フォーラムの1200人から第3 回には1600人までなっています。本フォーラムは、 日本のビジネス・コミュニティにおけるアフリカへ の商業機会にかかる機運および関心の維持に貢 献しています。 本フォーラムには日・アフリカ双方の政府関係者 及びビジネス・リーダーが結集し、これまでに日本 政府の6つの関係省、アフリカビジネス協議会、ア フリカ・インフラ協議会、経団連、経済同友会とい った主要な経済団体が参加しています。 さらに、在京アフリカ外交団、日本貿易振興機構 (JETRO)、国際協力機構(JICA)、国連工業開発 機関(UNIDO)、国連開発計画(UNDP)がフォーラ ムの開催に関与しています。 今後のフォーラムでも投資先としてのアフリカの 魅力を発信し続けます。 日本-アフリカビジネスフォーラム 承認総額: 181,878,748円 承認年 :2014年 37 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

アフリカ開発銀行グループと日本 38 1994

開発政策・人材育成基金によって 過去30年に支援された 30のプロジェクト例 チュニジア 保険セクター開発調査 17,793,050円 1995年承認 南部アフリカ 長期ファイナンス及び資本市場開発調査 26,273,427円 1997年承認 コートジボワール 人材育成プログラムの策定 39,163,642円 1997年承認 アルジェリア ソーシャルハウジングプロジェクト 3,333,988円 1998年承認 東アフリカ 遊牧民児童のためのセカンド・チャンスについての調査 46,821,338円 1998年承認 コートジボワール 貧困削減プロジェクト準備ミッション 14,571,294円 1999年承認 セイシェル 教育と保健セクターにおける社会福祉制度改革 4,668,607円 2000年承認 39 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

ガンビア 基礎教育プロジェクトの特定と準備 7,529,435円 2000年承認 ナイジェリア 保健プロジェクトの準備 5,706,836円 2000年承認 セネガル 貧困削減戦略ワークショップ 24,708,074円 2001年承認 ガーナ 保健サービス、リハビリプロジェクトの準備 13,004,821円 2001年承認 チュニジア 保険会社のモニタリングマニュアル 12,037,606 円 2002年承認 チュニジア 処理済み排水利用の研究 45,879,156円 2002年承認 南部アフリカ 南部アフリカ開発コミュニティリスク管理ワークショップ 13,168,728円 2004年承認 ウガンダ 農業セクターのレビュー 22,882,503円 2005年承認 40 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

中央アフリカ共和国 貧困削減戦略の実施 40,941,727円 2006年承認 モーリタニア 経済・金融強化ブログラム支援 88,174,250円 2007年承認 ニジェール 貧困削減及び開発戦略プロセス実施 75,195,644円 2007年承認 ブルンジ 紛争後の貧困削減戦略の実施 29,112,405円 2008年承認 コンゴ共和国 貧困削減戦略のモニタリングと評価 42,613,544円 2009年承認 アフリカ全域 北部・南部・東部・西部・中部のための地域統合戦略文書 123,715,022円 2010年承認 アフリカ全域 アフリカにおけるソーシャルビジネスとホリスティック・ソーシャルビジネス運動 96,372,228円 2012年承認 東部および南部アフリカ タイムリリース調査:東南部アフリカ諸国における 共同市場の税関・国境管理パフォーマンスの測定とベンチマーキング 78,057,395円 2015年承認 41 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

西アフリカ 西アフリカ保健機関のための技術支援 63,416,789円 2016年承認 アフリカ全域 民間セクターの競争力及び持続可能な経済成長のための 高等教育並びに科学技術促進 67,032,704円 2017年承認 ブルキナファソ 栄養バランスのとれた地産食材による給食プロジェクト 110,000,000円 2019年承認 マラウィ キャパシティビルディングおよび職業能力開発プロジェクト準備 49,152,918円 2020年承認 ケニア 衛生技術の移転による公衆衛生の改善と若者の職業能力強化 102,939,956円 2020年承認 アフリカ全域 50ミリオン・アフリカン・ウイメン・スピーク 27,326,064円 2022年承認 ケニア 医療情報インフラ強化のためのモバイル・テクノロジーによる 医療・ヘルスケアサービス改善 42,585,882円 2023年承認 42 1994 アフリカ開発銀行グループと日本

43 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

アフリカ開発銀行グループと日本 44 1994

「過去30年間を通じて開発政策・人材育成 基金は、農業・教育・ガバナンス・保健・地域 統合等の分野で100を超えるプロジェクトを 実施してきました。日本の人々のアフリカの 人々へのゆるぎない連帯に感謝しています。」 Akinwumi A. Adesina (アキンウミ・A・アデシナ) アフリカ開発銀行グループ 総裁 45 2024 開発政策・人材育成基金(PHRDG)30年の歩み

アフリカ開発銀行グループ

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